生きてるのにお葬式!生前葬のメリット・デメリットとは?

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生前葬というのは、その言葉の通り生前、つまりまだ生きているうちに行う葬儀です。著名人たちの生前葬はしばしば、ニュースなどでも報道されますが、一般の方の行う生前葬は、まだ十分に認知されていないというのが実情ではないでしょうか。
生前葬のメリットやデメリット、生前葬を行う際の注意点。さらに生前葬とお別れ会の違いなどについて解説します。

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生前葬とは

生前葬というのは、送られる立場の人がまだ生きているうちに、自分自身で開くお葬式です。

仕事など社会的活動に区切りをつけたり、お世話になった人や親しかった人たちに、元気なうちに感謝やお別れを伝えたり。社会的関係に区切りをつける場合に行う人が多いようです。

生前葬のメリット・デメリット

生前葬には、準備段階から、生前葬そのものまで、本人が行うことができるという特徴があります。ここではそのメリットとデメリットについて考えてみます。

生前葬のメリット

1.自分で自由に楽しくできる

いつどこで行い、誰を呼び、何をするかなど、飾る花の種類や振る舞う料理の内容まで、すべてを自分で決めることができます。
また、通常の通夜や葬儀・告別式とは違い、決まった形式などがないので、礼儀作法や段取りなどに縛られません。さらに、本人が元気に生きているうちに行うので、湿っぽくなりません。参列者に対し、自分で感謝やお別れを伝えることができるのも、大きな特長です。

2.時間的制約がない

亡くなった後に行う通常の葬儀の場合、遺体の問題や、さまざまな手続きに期限があるので、準備や打ち合わせにあまり時間がかけられません。しかし、生前葬なら時間的制約が
ありません。納得がいくまで、準備や打ち合わせ時間をかけられます。

3.家族への負担が軽減

一般的な葬儀の場合は、自分が亡くなった後、家族が葬儀社や宗教家と打ち合わせをしたり、会場や料理などの手配をします。
しかし生前葬は、打ち合わせも手配も自分自身で行います。また、生前葬をしておけば、葬儀はある程度簡略化することもできます。家族がごく近しい人たちのみで行うこともできるため、家族の時間的・金銭的負担が減らせます。

生前葬のデメリット

1.自分本意になりがち

自分の生前葬だからといって、費用や内容について家族や親族に相談せず、自分本意に話を進めてしまうのは考え物です。理解や協力が得られず、トラブルに発展してしまうこともあるでしょう。

2.理解を得られるのが難い

今の時点では、まだ生前葬を行う人は多くはありません。認知度も低く、家族や親族の中には、「生前葬は有名人が開くもの」と考えている人もいるかもしれません。
また「生きているうちに葬儀なんて不謹慎だ」というように、批判的な意見を持つ人もいるでしょう。生前葬を希望しても、周囲の理解を得るまでには時間と労力がかかるかもしれません。

3.二度手間になる

遺族や親族の気持ちの問題などから、「生前葬をしたから葬儀はしなくていい」とはなり難いのが現状です。このような場合、生前葬を行っていたとしても、亡くなった後、一般的な葬儀を行うことになり、家族の時間的・金銭的負担は減らせない場合も少なくありません。

生前葬での注意・気を付けたいこと

デメリットでも触れましたが、生前葬は徐々に認知されてきているとはいえ、まだまだ一般的ではない葬儀形式です。そのため、家族や親族などの理解を得ることが重要になってきます。
生前葬を開きたいと思ったら、まずは自分で、どれくらいの人を呼んで、どんな内容のものを開きたいのかをイメージし、費用がどれくらいかかるのかを計算してみましょう。

開きたい生前葬のイメージと、それにかかる費用が決まったら家族に相談し、家族の理解が得られたら、親族の同意も取り付けておきましょう。

亡くなった後の葬儀についても考えておく

生前葬を行った場合、亡くなった後の葬儀は行わなくてもいいかといえば、なかなかそうはいきません。家族や親族が世間体を気にすることなども理由のひとつですが、葬儀には「遺された人のために行う儀式」という意味や役割があるからです。

生前葬とお別れ会の違い

生前葬とややコンセプトが似ていると考えられるものに、お別れ会があります。
生前葬同様、葬儀と比較して自由度が高いのが特徴です。

死後に行われるものなので、施主は本人ではありませんが、故人と親しかった友人たちなど、故人の人となりをよく知っている人たちが中心となって行うケースも多く、その人らしさを表せるお別れという点では、生前葬に近いともいえます。

お別れ会とは

お別れ会というのは、「故人や家族が何をしたいか」「故人はどんな人だったか」をベースに内容が組み立てられる「故人を偲ぶための会」です。最近では葬儀を終えた後、一定の期間を開けて行われることが増えているようです。また施主となる人も、喪家や遺族だけでなく職場の関係者や友人など、さまざまです。

一般的な葬儀と比較して、会場や内容、演出など自由度が高いのが特長です。細かい段取りや礼儀作法、また慣習や常識という言葉で表現されるような制約がありません。

生前葬とお別れ会の宗教は?

どちらも、無宗教形式で開くケースが多いですが、宗教的な要素を含む場合もあります。
生前葬は、本人が自分で開くことがほとんどですが、お別れ会は、遺族や故人に縁のある人が集まって開くケースが多いようです。
葬儀を終えて、遺族の気持ちの整理が終わる、四十九日や一周期のタイミングに行う場合が多いため、打ち合わせには十分な時間がかけられるなどメリットが多く、認知が高まりつつあります。

生前葬の歴史

生前葬の記録としては、古いものでは江戸時代のものがあります。
現在の長崎県平戸市にあたる肥前平戸の藩主、松浦静山が記した随筆集『甲子夜話』に、生前葬を行ったという記録が残っています。

現在の熊本県にあたる肥後の家老が、城下のある寺院の住職に「人生一度は野辺送りにあうものだから、命あるうちに葬礼をしてほしい」と願い出ました。野辺送りとは、遺体を墓場まで運ぶ葬列のことです。
その家老は、当日までに棺や香花などをすべて準備し、葬礼では白装束で棺に入りました。墓場まで葬列を組み、僧侶たちに読経してもらうという、実際の葬儀さながらのもので、埋葬される直前に棺から出たといいます。

家老は生前葬の後、「吾はすでに死せり。そののち真に死せば仏法によるべからず」と言い残して亡くなります。自身は甲冑を身に纏い、従者には出陣の格好で葬列を組ませ、宗教家不在の儀式で葬られました。

生前葬を行った有名人

俳優の水の江瀧子さん

いずみたくさんと、中村八大さんの追悼コンサートへの出席をきっかけに、コンサートをプロデュースした永六輔さんと生前葬を企画。俳優の森繁久彌さんが葬儀委員長を務め、永六輔氏さんが司会を担当し、三船敏郎さんが代表献花を行うという豪華な顔触れで執り行われ、本人を前にユニークな弔辞が次々に読み上げられるという、笑いの絶えない賑やかな生前葬となりました。

数年後、水の江さんは94歳で亡くなりましたが、葬儀は近親者のみで行われました。

漫画家の高井研一郎さん

自身の発案で周囲が賛同し、74歳の誕生日に開催。同じ漫画家のちばてつやさんが葬儀委員長を務め、映画監督の山田洋次さんが献杯のスピーチを担当。藤子不二雄Aさん、さいとうたかおさん、桂三枝さんなどが参列し、賑やかな生前葬となりました。

その後、高井さんは、79歳で亡くなるまで、3回も生前葬を行っており、いずれも漫画家や落語家など、多種多様な人たちが参列しています。

株式会社小松製作所 元社長の安崎暁さん

安崎暁さんは、80歳のときに末期がんで手術不能と診断され、残された時間の「クオリティー・オブ・ライフ」を優先するために、延命治療を断りました。

元気なうちに感謝の気持ちを伝えたいと考え、個人で新聞広告を出し、自身のがんを公表。自ら「感謝の会」を企画し、参加を呼びかけました。会社でなく個人で会を企画した理由は、儀礼風になるのを避けるため。「せっかく来てもらうなら、楽しく帰ってもらおうと考えました」と語っています。

「感謝の会」には、約1,000人が参加しました。安崎さんは車いすを押されながらテーブルを回り、参加者と談笑。閉会後、「人生で巡り合った人に握手し、ありがとうと言えたことに満足している」と話しました。

その他の生前葬を行った有名人

  • 赤塚不二夫さん
  • アントニオ猪木さん
  • 永六輔さん
  • 小椋佳さん
  • カンニング竹山さん
  • 桑田佳祐さん
  • テリー伊藤さん
  • ビートたけしさん
  • SMAPさん
  • 宮崎謙介元衆議院議員 など

生前葬は定着するのか?しないのか?

一般の人の間で生前葬がどのくらい行われているのかは、正確な数字はわかりません。しかし、葬儀のかたちが変化する中、認知度は高まっていると考えられます。

生前葬を行うケースとしては、例えば独身の人で、自分が亡くなった後に葬儀を行わず、生きているうちに友人を集めて感謝の集いを開くというもの。また、障害者の子どもを持つ親が、年齢や病気などをきっかけに、親族や友人などを招き、「自分の死後も子どもを頼む」と伝えるケースなどもあるようです。

生前葬は人と人とのつながりを生み、途切れたつながりも蘇らせるきっかけになります。
また、人生を振り返り、確認できるだけでなく、自分の生きた証しにもなります。さらに生前葬は、本人が自分の人生や死と向き合う儀式ともいえます。

日本には昔から、60歳の還暦や70歳の古稀、77歳の喜寿や88歳の米寿、そして99歳の白寿など、年齢の節目に長寿を祝う風習がありました。本人が生きている間に行われ、家族や親族が集まって長寿を祝い、想い出を語ったり感謝を伝える風習は、まるで生前葬です。

どちらも「人生の区切り」という意味では共通しています。
まだまだ生前葬の認知度が低く、戸惑う人も少なくありませんが、長寿を祝う風習が今日まで続いてきたように、今後は生前葬も定着するかもしれません。

まとめ

最近では、テレビドラマの一場面でも生前葬が行われるシーンが放映されるなど、生前葬は広く知られるようになりつつあります。芸能人などに限らず、一般の人が生前葬を行ってももちろんかまいません。また生前葬はもちろん、さまざまなお別れをかたちにするサービスも行われています。

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