自宅葬とは、故人の自宅で執り行う葬儀のことです。思い入れのある自宅でゆっくりと故人を送ることができます。
また、自宅で行うため、ある程度自由な葬儀を行えるのも特徴です。この記事では、自宅葬の特徴や、流れ、自宅葬を行う際のメリット・デメリットなどをご紹介します。
自宅葬とは・特徴
自宅葬とは、亡くなった故人の自宅で通夜、葬儀を行うことです。
自宅での葬儀は葬儀会場で行われるものと違い、自由度の高いお葬式が可能です。また会場の制約がないので、故人を偲んで好きなものを並べたり、自由にお別れをアレンジすることができます。
自宅葬の割合
鎌倉新書が2024年に実施した「第6回お葬式に関する全国調査」によると、自宅で葬儀を行う人の割合は4.3%。
かつて、葬儀は自宅で行うのが一般的でしたが、1990年代から葬儀式場での葬儀が増加しました。現在では8割以上の人が葬儀を斎場や葬儀会館で執り行っており、反対に自宅で葬儀を行う人は5%以下となっています。
自宅葬が減少した理由については、自宅ではなく病院で亡くなる人の割合が増えた。マンションなど集合住宅に暮らす人が増えた。近所付き合いなど地域とのつながりが希薄になったというように、私たち日本人の生活環境が大きく変化したこともあります。
また、かつて自宅葬の準備などが大変だったといった経験から、葬儀の段取りなどをすべて任せることができるということも、葬儀式場での葬儀が選ばれる理由のひとつです。
しかし、最近では自宅での葬儀が見直される傾向もあるようです。
従来のように大勢の弔問客が訪れるのではなく、家族葬のように、ごく親しい人の少人数で行う葬儀が増えています。親しい人たち少人数でのお別れであれば、自宅でのお別れも不可能ではありません。
また葬儀の内容も、かつてのようにしきたりにとらわれず、その人らしい葬儀を希望する人も増えています。無理に白黒のクジラ幕を張ったり、白木の祭壇を組んだりすることもなく、故人の住み慣れた家で、ゆっくりとしたお別れを行うことも可能です。
このように、現代の葬儀スタイルに合わせ、省スペースでマンションなどでも行える自宅葬をプロデュースする葬儀業者も現れています。
自宅葬の流れ
葬儀社を通す場合
まず葬儀社に連絡して、病院や自宅に迎えに来てもらい、ご遺体の搬送・安置を行います。
自宅葬の場合でも、安置場所が「自宅」か「安置施設」の2つを選べる葬儀社もあります。そこで葬儀社のスタッフと、葬儀の打ち合わせをします。
通夜や葬儀告別式の流れそのものは、基本的には会館での葬儀と変わりはありません。
ただし、自宅を会場にする場合には、棺をどこに安置し祭壇をどこに飾るか、何人くらいの人が集まるのかといったことから、弔問に訪れる人の動き、導線まで綿密に考えた上で準備を行います。
葬儀社によっては使い慣れている式場での葬儀にするように強く勧める場合もあります。
ある意味、葬儀担当者の力量が試されるのが自宅葬といっても過言ではありません。
葬儀社を通さないことも
自宅葬は葬儀社を通さないで行うこともできます。
しかし、ご遺体の搬送や安置・安置用のドライアイスの手配・火葬場の手配・枕飾りや棺などの手配などをすべて遺族で行わなければいけないので、現実的とはいえません。
場合によっては、飾りつけや演出などは遺族や故人の友人たちが、納棺や出棺、火葬場への搬送などは葬儀社に依頼するというように、分担して葬儀を行うこともあります。
自宅葬のメリット
住み慣れた家でお別れができる
自宅葬のメリットとしてまず挙げられるのが、故人が住み慣れた家でお別れができることです。入院生活が長く、最期は「自宅に帰りたい」といった個人の想いを叶えることもできます。また故人の好きなものを並べやすいです。
時間を気にせず過ごせる
葬儀会場では、時間の制約があり、滞在時間が限られていることがほとんどです。
自宅葬であれば、制限時間がないので故人とゆっくり時間を過ごせます。
思いきり泣いたり、話しかけたりする場合でも、他の方の目を気にする必要がありません。
自由なお葬式が行える
時間や会場ごとのルールの制限がないので、好きな料理を作ったり、弔問客を招いたりな
ど自由にお葬式を行えます。ご近所付き合いがある地域では、自宅葬を行うと近所や組合の方が手伝いに来てくれるこ
とが多いです。親族のみで行うというよりは、近所の方も一緒になって葬儀を行うという
考え方の地域もあります。
親しい人に囲まれ、ゆっくりと自宅で行うお葬式であれば故人も喜んでくれるでしょう。
会場費用がかからない
費用面については、自宅葬の場合、式場使用料がかかりません。この点はメリットといえ
ます。
自宅葬のデメリットと注意点
自宅葬を行う前に、ご近所への配慮が必要
自宅でお葬式を行う場合、まずご近所への配慮を考えましょう。
弔問客や棺の出入りや話し声がするため、あらかじめご近所へは声をかけておくことが必要です。
弔問客が多い場合は、駐車場などの確保も必要です。
自宅周辺の環境がどうなっているか、迷惑にならないかを確認しておきましょう。
自宅葬は可能?集合住宅の規約を確認
建物によっては自宅葬自体を禁止していることもあります、自宅が集合住宅であれば、規約を確認しましょう。
また集合住宅の集会所で葬儀を行える場合もあります。自宅ではありませんが、故人の住み慣れた場所で、地域の人たちも参列しやすいという点では自宅葬と共通する点があります。
自宅葬の場合、準備・後片付けを葬儀社任せにはできない?
自宅葬では、料理や食器の用意、後片付けなどをすべて自分で行わなければいけません。
遺族だけで行うのが難しい場合は、手伝ってくれる方の手配を行う必要があります。
自宅葬を行うスペースの問題
自宅葬を行う場合、ある程度のスペースを確保しなければいけません。
弔問客が少なければ小規模な祭壇が置ける6畳ほどのスペースがあれば、お葬式は可能です。
エレベーターで棺を運べるかの確認
マンションの場合は、エレベーターに棺を乗せることが可能かも確認しておきましょう。
高層マンションなどでは大型の荷物を運ぶための大型エレベーターが設置されているところもあります。また一般的なエレベーターでも、大型の荷物を運ぶために背面の扉が開き、スペースを確保できる場合もあります。
マンションで葬儀はできる?4つのポイント
東京だけでなく地方都市でもマンションやアパートなどの集合住宅が多くなり、自ずとご近所付き合いも希薄になってきました。こうした中で家族葬を自宅でもできますか、といったお問い合わせも微増しています。
ご葬儀をマンションなどの集合住宅で営みたいというご希望がある場合、最も大切なことはもしもの時に備え、最寄りの葬儀社に事前相談をされることです。事前相談することで、葬儀社から経験上のさまざまなアドバイスのほか思いもよらなかった注意すべき点などを教えてくれます。
また、以下の4点を必ず確認しておきましょう。
1:マンションの規約で葬儀が禁止されていないか
私もマンションでの葬儀のお手伝いに伺った経験がありますが、葬儀担当者から「マンションによっては葬儀を行なう事を禁止しているところもあるんだよ」と教えてもらったことがあります。
2:マンションのエレベーターにストレッチャーが入るか
病院で亡くなった後、お部屋に故人様を安置する場合、マンションのエレベーターにストレッチャーが入るかどうか、管理事務所に確認が必要。
3:近隣住人の対応をどうするか
葬儀を行うということは葬儀関係者の出入りもあるため、お隣のお部屋の方などにはお知らせしておいたほうが良いと思います。
場合によって、お焼香されたいといったご希望も出るかもしれません。こうした御厚意に対し予めどう対応するのか(参列をお受けするのか、またはお断りするのか決めておいたほうがよいでしょう。もし、お断りするのであれば近隣の方々への配慮、マナーとして家族葬を行うことの報告とこれまでお世話になったお礼の言葉、弔問辞退など丁重にお伝えしておくことが大切です。
4:遠方からいらっしゃるご親族の宿泊ホテルが近くにあるか
遠方から参列するご親族がいる場合、宿泊場所の確保が必要です。ご自宅であるマンションの近くに、宿泊できる施設があるか、合わせて確認しておきましょう。
事前相談で以上のようなアドバイスを葬儀社から受け、家族の方々と再考されるのがベストです。再考した上で、もしもの時はやはりお部屋から送ってさしあげたいというお気持ちが強い場合は、葬儀担当者に自宅に来てもらいエレベーターはじめお部屋の間取りを見てもらった上で出棺の際の車の対応など具体的なアドバイスをもらいましょう。
自宅葬対応の葬儀社を探すときのポイント
希望の自宅葬プランがあるか
自宅葬は、ほとんどの葬儀社で取り扱っています。
しかし、希望する内容や自宅の間取りによっては難しい場合があります。
希望するプランを取り扱っているどうかを確認しておきましょう。
どこまでが自宅葬プランに含まれているか
葬儀社によってどこまでプランに含まれているかが異なります。
どこまでが基本プランに含まれているか、どこからがオプションになるのかを確認しましょう。
また、追加料金が発生するのはどのような場合なのかも、事前に確認しておきましょう。
価格だけでなく、自宅葬の内容を確認する
自宅葬は会場費用や料理費用がかからないため、低価格や定額で提供している葬儀社も多いです。
費用も大切ですが、大事なのは内容です。自分の希望するお葬式が行えるか、きちんとプランの内容が提示されているかを確認しましょう。
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