神式葬儀の流れとマナー。仏式葬儀との違いや作法、香典相場を解説

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

スマホCTA(電話をかける)
記事を先読み
  • 神道では故人は神々の世界へ帰り、先祖と共に子孫を見守る神様になる
  • 神式葬儀では、手水・拝礼・玉串奉奠などがあるため事前に確認する
  • 神式葬儀に参列するときは、仏式用語を避けてお悔やみを伝える

日本では、仏式で行われるお葬式がほとんど。神式葬儀と仏式葬儀では、参列の仕方や言葉遣いなどが違うため、神式葬儀に参列するときは注意が必要です。

この記事では神式葬儀とは何かを解説し、神式葬儀と仏式葬儀の違いやマナー、香典、葬儀の流れ、法要について紹介します。

Adsense(SYASOH_PJ-195)

神式の葬儀(神葬祭)とは

神式の葬儀は、神葬祭(しんそうさい)と呼ばれ、故人は死後神々の世界へ帰って子孫を見守ると考えられています。そのため神葬祭は、故人を子孫の家に留めて守護神になってもらうための儀式でもあります。

神葬祭のふたつの意味

神式葬儀には、「穢れ(けがれ)」と「先祖崇拝」という2つの概念があります。

「穢れ」は生命力が減衰した状態を指し、気枯れともいいます。神道では死を穢れとしていて、神葬祭を執り行うことで不幸が起きた非日常を祓い清め、日常の世界に戻す意味があるのです。ちなみに、お茶碗にお箸を立てたり、屏風を逆さまにしたり、故人の布団を上下逆に掛けるなどの葬儀のしきたりは、いずれも非日常の世界であることを表しています。

一方「先祖崇拝」は、「故人は死後神々の世界へ帰り、先祖と共に子孫を見守る神様になる」という神道の考え方です。故人は神葬祭が執り行われた後に祖先神となり、仏教の位牌にあたる霊璽(れいじ)に故人の御霊(みたま)が移されます。その後、霊璽と神具を収める祭壇である祖霊舎(それいしゃ)に祭ることで、一族を守る存在となるとされています。

神葬祭の歴史

神道は、縄文時代から弥生時代を経て、古墳時代に原型ができた宗教だといわれています。日本最古の歴史書である古事記には、アメノワカヒコの葬送の様子が記されており、古墳時代からすでに神葬祭が執り行われたことがうかがえます。

ただし、神道という言葉が誕生したのは、6世紀頃に日本に仏教が入ってきた後のこと。仏教と区別するために、神道と名付けられたのが最初です。飛鳥・奈良時代には天皇家をはじめとする権力者が仏教を信仰するようになり、仏式葬儀が急速に普及していきました。

その後、江戸時代半ばに葬儀のあり方を見直す動きが起こり、明治時代に神式葬儀が認められるようになったことで、次第に全国へと広まっていきました

神式葬儀と仏式葬儀の違い

神式葬儀と仏式葬儀は、信仰する宗教が別々なので、そもそも考え方が違います。

神道は、古来から日本に根付いている民族宗教で、万物に神様が宿るという考え方です。故人の魂は幽世とよばれる神域に行き、守護神となって子孫を見守る存在となります

一方、仏教はインド発祥の普遍宗教で、インドから中国、そして日本に伝わってきました。仏教の開祖である仏陀を唯一神として祀り、悟りを開くことで輪廻転生から抜け出して極楽浄土へ行けるという考え方です。故人は仏となって冥界へと旅立ち、新しい命に生まれ変わるという死生観があります。

神道と仏教は、信仰宗教の違いにより、信仰対象や死生観、葬儀の目的が大きく異なります。仏式と神式の違いについて気になる方は、ぜひ下の記事も参考にしてください。

≫ 仏式(仏教)と神式(神道)の違いとは?葬儀の作法や場所、費用を比較

神道と仏教の用語の違い

仏教神道
僧侶神職
喪主斎主(さいしゅ)
位牌霊璽(れいじ)
お布施御礼、御祭祀料、御玉串料など
供物神饌物(しんせんもの)
焼香玉串奉奠(たまぐしほうてん)
法要霊祭(れいさい)、式年祭(しきねんさい)
戒名諡号(おくりな)、霊名など
忌中払い直会
初七日十日祭
四十九日五十日祭
一周忌一年祭
*厳密には全く同じではない用語もありますが、わかりやすさを考慮して1対1で対応させています

神式の葬儀で知っておきたいマナー

  • 服装・持ち物
  • お悔やみの言葉
  • 手水・拝礼の作法
  • 玉串奉奠の作法

神式葬儀では、服装や言葉遣い、作法などが、仏式葬儀と大きく違うため注意が必要です。ここでは、神式葬儀のマナーを詳しく解説します。

服装・持ち物

神式葬儀に参列するときの服装は、仏式葬儀と同じく喪服で問題ありません。一般的に、男性はブラックスーツ、女性はブラックフォーマルを着用します。光沢のない黒色の靴やバッグ、小物類を選び、華やかなアクセサリーや殺生を連想させる動物の革は避けましょう。

また、神式葬儀では数珠を身につけないようにします。数珠は仏教で使用される仏具で、神道とは関係ないためです。葬儀にふさわしい身だしなみは、性別や立場によって変わってきます。葬儀にふさわしい服装や身だしなみについて気になる方は、ぜひ下の記事も参考にしてください。

≫ お葬式・告別式にふさわしい服装と身だしなみ【男女/立場別】

お悔やみの言葉

神式葬儀におけるお悔やみの言葉は、仏式と異なるため、仏教用語を使用しないよう注意しましょう。仏式葬儀では「ご冥福」「成仏」などがよく使われますが、神式葬儀にはふさわしくありません。お悔みの言葉は、宗教問わず使える言葉や神式葬儀に合った言葉を使用するのがマナーです。宗教問わず使えるお悔みの言葉としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 哀悼の意を表します
  2. 謹んでお悔み申し上げます
  3. 安らかな眠りをお祈りいたします

神式葬儀は、故人を一族の守護神として迎える儀式であるため、儀式にふさわしい言葉遣いを心がけるとより丁寧です。神式葬儀で使えるお悔みの言葉は以下の3つが挙げられます。

  1. 御霊のご平安をお祈りします
  2. 安らかに眠られますよう
  3. 心より拝礼させていただきます

手水・拝礼の作法

手水・拝礼の作法(①左手を洗う②右手を洗う③左手で口をすすぐ④懐紙で手をふく)

神式葬儀で覚えておくべきマナーとして、手水の作法と礼拝の作法が挙げられます。手水は、心身を洗い清める禊の儀式を簡略化したもの。省略する葬儀もありますが、式場に用意されている場合は葬儀の前に必ず行いましょう。

  1. 右手で柄杓を持ち、桶に汲まれたご神水をすくう
  2. 最初に左手を洗い流し、続いて柄杓を左手に持ち替えて右手を洗い流す
  3. 柄杓を右手に持ち替えて、左手で水を受けて口をすすぐ
  4. 柄杓を元の場所に戻し、懐紙で両手をふき取る

神式葬儀の拝礼は、神社への参拝と同じ「二礼二拍手一礼」の作法が一般的です。ただし、葬儀での拍手は音を立てないよう、両手を打つ直前で止める「しのび手」で行いましょう。本来、拍手で音を立てる理由は喜びの気持ちを表すためといわれており、故人を悼み偲ぶ葬儀ではふさわしくないためです。

玉串奉奠の作法

玉串奉奠の作法(①神職から玉串を受け取る②玉串案に進み玉串を捧げる③数歩退いてしのび手で二礼二拍手一礼する)

玉串奉奠(たまぐしほうてん)とは、神道の葬儀で行われる儀礼で、仏教の焼香に相当します。玉串とは、神様が宿るとされる榊の枝に紙垂(しで)という紙を結びつけたものです。玉串を謹んでお供えすることを奉奠といいます。玉串をお供えする際は、玉串案と呼ばれる台に乗せます。玉串奉奠の流れは次の通りです。

  1. 喪主と遺族に一礼し、神主の方へ進んで一礼する
  2. 玉串を渡されたら、右手で上から玉串の根元を、左手で葉先を支えるように持つ
  3. 葉先が少し高くなるようやや斜めに持ち、玉串を胸の高さまで持ち上げる
  4. 祭壇前に置かれた玉串案の前まで進んで深く一礼する
  5. 玉串を時計回りに90度回転させて縦にし、両手で玉串の根元を持つ
  6. 目を閉じて、2~3秒ほど祈念する
  7. 玉串を時計回りに180度回転させ、根元が祭壇の方に向くようにする
  8. 玉串を両手で添えて玉串案に置く
  9. 深く二礼し、しのび手で二拍手、最後に深く一礼する
  10. 二歩後退して向きを変えて、神主と遺族に会釈して自分の席に戻る

地域や宗派によって異なる場合があるため、葬儀が始まる前に斎場スタッフや神職に確認しておくと良いでしょう。

神式葬儀の香典

神式葬儀での香典の相場はいくらなのか、香典袋の選び方や書き方がわからない方も多いでしょう。詳しく解説します。

香典の相場

故人との関係御玉串料
両親約5万円~10万円
祖父母約1万円~3万円
兄弟姉妹約5万円
義両親約5万円~10万円
義祖父母約1万円~3万円
義兄弟姉妹約1万円~3万円
叔父・叔母約1万円~2万円
親戚約3千円~2万円
友人・知人約5千円~1万円
上司約5千円~1万円
同僚・部下・後輩約5千円~1万円
恩師約3千円~1万円
近所の方約3千円~1万円

神式葬儀における香典は「御玉串料」と呼ばれており、神様への供え物として玉串の代わりに納めるお金を指します。御玉串料で包む費用目安は、一般的な仏式香典と変わりません

御玉串料を納める際、適度に使用感のある旧札を入れるのが基本です。新札しかない場合は、一度折り目をつけてから入れると印象が良くなります。御玉串料の他に、仏式葬儀での供物に相当する「神餞物(しんせんぶつ)」をお供えする場合は、米や酒、菓子折りといった食べ物がふさわしいです。

香典の相場やマナーが気になる方は、下の記事もあわせて参考にしてください。

≫ 香典の相場はいくら?関係性や法要、葬儀種類別の香典金額を紹介

香典袋

神式葬儀で使用する香典袋は、無地の封筒を選びましょう。蓮の花が描かれたものは仏式、百合の花が描かれたものはキリスト教式用の香典袋のため避けてください。水引は白黒、双銀のどちらかを選びます。

表書きを書く時は、筆ペンか毛筆を使うのがマナーです。筆ペンか毛筆を用意できない場合は、黒色のサインペンで代用しましょう。ボールペンや鉛筆はカジュアルすぎるため避けてください。

神式では、香典袋の上段の中心に「御霊前」もしくは「御玉串料」と書きます。御霊前は宗教問わず使用できるため、神式葬儀で使用しても問題ありません。下段には自身の氏名を書きましょう。氏名は御玉串料よりもやや小さめに書きます。

突然の訃報が届いて神式葬儀に参加することになっても、しっかりとマナーは守りたいものです。香典の正しい書き方が気になる方は、下の記事を参考にしてください。

≫ 香典の正しい書き方は?表書きや金額、名前の書き方とマナー

神式葬儀の流れ

神式葬儀である神葬祭は、仏式葬儀と同じように2日間かけて営まれます。神道は八百万の神と祖先への崇拝をベースにした自然発生的宗教であり、地域や神職によって流れが異なるのが特徴です。ここでは、神式葬儀の一般的な流れを詳しく解説します。

逝去当日

故人が逝去した当日は、帰幽奉告(きゆうほうこく)、枕直しの儀、納棺の儀の順に儀式が執り行われます。

帰幽奉告とは、神棚や先祖をまつる祭壇である祖霊舎(それいしゃ)に、故人の死を奉告(ほうこく)する儀式です。神道において死は穢れとされるため、帰幽奉告の際は先祖の霊が穢れに触れないよう、神棚や祖霊舎の扉を閉じ、「神棚封じ」と呼ばれる白い紙を貼って塞ぎます。

枕直しの儀では、故人に白小袖を着せて白い布で顔を覆い、屛風を立てて北枕に安置します。小案と呼ばれる小さな台を2つ用意し、一方の小案には生前故人が好んでいた食べ物や米・塩・水などを供え、もう一方の小案には守り刀の背を配置するのが一般的です。

納棺の儀では、遺体を清めた後に死装束に着替えさせて棺に納めます。白装束を着せず、遺体の上に白い布をかけるだけのこともあります。棺のふたを閉めた後に、紙垂を下げたしめ縄を巻き装飾します。祭壇に供物をしたら、遺族全員で礼拝を行うのが一般的です。

神葬祭1日目

神葬祭1日目は、通夜祭、遷霊祭(せんれいさい)の順で執り行われます。

通夜祭は仏式葬儀の通夜に相当する儀式で、故人が死後安らかに眠ることを祈り、子孫の家の守護霊として守ることを願うのが特徴です。儀式が始まると、雅楽奏者による演奏とともに神職が祭詞(さいし)と祭文(さいもん)を唱えます。その間に、遺族や参列者は玉串を奉って拝礼します。

遷霊祭は、御霊移しとも呼ばれており、故人の魂である御霊を遺体から抜いて霊璽に移すための儀式です。御霊を移すときは魂が動くとされる夜を再現するため、部屋の明かりを消した暗室で行われます。遷霊祭が終了すると、全員が霊璽の前に集まって米や菓子折りなどを供える場合もあります。本来は通夜祭とは別の儀式ですが、現在は通夜祭の一部として執り行われるのが一般的です。

神葬祭2日目

神葬祭2日目は葬場祭、火葬祭、埋葬祭、帰家祭、直会の儀の順で執り行われます。

葬場祭は仏式葬儀の葬儀・告別式に相当し、弔辞の奉呈や弔電の朗読、神職による祭詞奏上、玉串奉奠などで構成されるのが一般的です。棺に花を入れて故人に最後の別れをしたら、遺体を火葬場に向けて出棺します。

火葬場に到着したら、続いて火葬祭を執り行います。火葬祭は炉前や特別室で行われ、神職によるお祓いや祭詞奏上、遺族と参列者による玉串奉奠が行われた後に、棺が火葬炉に入るところを見守るのが通例です。

埋葬祭は、遺骨を墓に埋葬するための儀式です。かつては、火葬場から遺骨を持って直接墓地へ運んでいました。近年は遺骨をいったん持ち帰り、忌明け後である五十日祭で埋葬するご家庭が多いです。

帰家祭は、葬儀が無事終了したことを神様に奉告する儀式。火葬場から戻ってきた後に手水と塩で身を清め、祭壇である仮霊舎(かりみたまや)に遺骨と霊璽を安置します。葬儀が終了したことを奉告して、祭詞奏上、玉串奉奠を行います。

直会の儀は、葬儀がすべて終わった後に関係者一同をねぎらうための宴です。無事に儀式が終了したことに感謝し、参列者へのお礼の意味を込めてもてなします。

神式葬儀後の法要

神式葬儀を挙げた後も、仏式の法要に相当するさまざま行事が存在します。ここでは、神道における法要について解説します。

霊祭

神道では、葬儀後の行事のことを霊祭といいます御霊祭や墓前祭、祖霊祭とも呼ばれており、命日から1年未満に執り行われる儀式の総称です。神道の法要は、故人の逝去した日を第1日目として数えます

霊祭は逝去してから10日ごとに祭儀を行いますが、近年は省略するご家庭が増えています。五十日祭は仏式の四十九日に相当し、忌明けとなるため霊祭の中でも重要な儀式です。自宅もしくは斎場で、神職や親族、故人と親しかった関係者を招いて祭儀を執り行います。五十日祭で納骨するケースが多いため、埋葬祭も一緒に行われることがあります。

式年祭

式年祭は、逝去してから1年以上経過した後に行われる儀式の総称で、年単位の周期で祭儀が執り行われるのが特徴です。逝去してから満1年目である一年祭や、満3年目である三年祭などがあります。とくに一年祭は喪明けとなるため、親族や友人を招いて盛大に執り行われます。仏式と同じように喪服を着て参列するケースが多いですが、家や地域によって異なる場合があるため、喪主に確認をとっておくと安心です。

その後、五年祭や十年祭など節目ごとに式年祭が行われ、満50年目の五十年祭で仏式の弔い上げに相当するまつりあげを済ませます。近年は、五年祭以降の式年祭は遺族だけで済ませることが多いです。

神式葬儀の流れを理解してから臨むと安心

神道には穢れと先祖崇拝という2つの大きな概念があり、死は穢れとして神葬祭で祓い清め、故人は家の守護神となって一族を守る存在になると考えられています。

神式葬儀では、仏教に関連する言葉や道具の使用を避けるのがマナーです。神式葬儀では仏教用語を使わず、数珠も持たないで参列しましょう。事前に神道の作法やマナーを覚えておくと、安心して参列できます。

葬儀・お葬式を地域から探す

最新情報