天台宗の葬儀の特徴 – 流れ・マナー

小林憲行【記事監修】
小林憲行

記事監修小林憲行

スマホCTA(電話をかける)

仏式葬儀では、宗派によって儀式や作法、葬儀の意味など、さまざまな違いがあります。そのため、他宗派の葬儀に参列した際に作法やマナーを間違えてしまわないように、事前に確認しておく必要があります。ここでは大乗仏教の宗派の1つである天台宗の葬儀に参列する方向けに、天台宗の葬儀の意味と流れ、作法、参列のマナーについて解説しています。

Adsense(SYASOH_PJ-195)

天台宗の葬儀とは

天台宗の葬儀は、顕教法要・例時作法・密教法要の3つの儀式によって執り行われます。天台宗では、仏の教えを顕教(けんぎょう)と密教(みっきょう)の2つに分けて考えています。顕教は「自身を救い他人を利する」という教えで、一方の密教は「仏と自己の一体を観念し、仏の力で仏の境地に達する」という教えです。この2つの教えによって故人の罪や穢れを拭い去り、故人や緑者と一緒に仏道に達するというのが、顕教法要と密教法要の考え方です。

顕教法要では、法華経を読誦して故人の生前の行いに対する懺悔を行います。懺悔には、仏性を高める意味合いがあります。密教法要では、サンスクリット語をそのまま音写した「光明真言」を念誦して本尊を供養します。これによって故人が極楽浄土へ引導されることを祈ります。

一方、これらの間に執り行われる例時作法では、阿弥陀経を読み上げて阿弥陀如来に救いを求め、故人が極楽浄土へ往生するように願います。これら3つの儀式により、故人を仏の道へと導いていきます。

また、天台宗の葬儀では、散華といって蓮の花びらに見立てた紙を柩などにまく儀式があります。これは、蓮の香りにより悪いものを払うと考えられているためです。

天台宗の葬儀の流れ

天台宗のお通夜

通夜では、枕元で阿弥陀経を読経する枕経から入ります。この枕経が終わると、朝は法華経を読経、夕方からは阿弥陀経を読経します。読経後、剃度式を執り行います。剃度式は、出家をするために髪を剃る儀式のことです。現代では、実際に髪を剃ることはほとんどなく、髪を剃る真似だけで済ませます。この剃度式では、辞親偈(じしんげ)・懺悔文(ざんげもん)・授三帰三竟(じゅさんきさんきょう)が順番に唱えられます。

剃度式の後は、故人に戒名をさずける授戒式(じゅかいしき)が行われ通夜が終了します。

天台宗の葬儀

導師が葬儀場に入場をすると、起立をして列讃(れっさん)を行います。列讃では、楽曲とシンバルなどの打楽器が鳴らされます。列讃が終わると阿弥陀如来の迎え入れ、故人を仏とする光明供修法、杖を振り声明を唱える九条錫杖、供養をするための随法回向を執り行います。

そして、再度列讃を行った後、故人の棺を封じて送る準備をする鎖龕(さがん)・起龕(きがん)、茶や湯を備える奠湯(てんとう)・奠茶(てんちゃ)が行われます。

これらの儀式を終えてようやく旅立ちの準備が整います。

そして、導師は故人が成仏するように引導を渡し、松明もしくは線香を手に取って下炬文(あこぶん)を唱えます。その後、弔辞と弔電を読み上げて再度読経をし、念仏と光明真言、回向文を読み上げて葬儀が終了します。葬儀が終わると導師が退場し、出棺となります。

「天台宗葬儀の式次第」例

入場 導師、式衆が入場します。
列讃 如来の四智を梵語によって讃えます。
光明供修法 阿弥陀如来の来迎を得て、故人を仏とする作法です
九条錫杖 杖を振って声明を唱えます。
随法回向 供養回向します。
鎖龕(さがん) 棺の蓋を閉ざす儀式と起こす儀式を行います。起龕(きがん)
奠湯(てんとう) 茶湯器を供える儀式です。奠茶(てんちゃ)
引導下炬(あこ)文 導師は手に松明か線香を持ち、空中に梵字とそれを囲む円を描き、故人の徳の高さを讃える下炬文を唱えます。
法施 読経し念仏を唱えます。
総回向 回向文を唱え、式を終了します。
退場 導師、式衆が退場します。

※松明(たいまつ)=葬列が夜行われていたころの名残。教義では、闇を照らす光明と意味付けられています。

※下炬(あこ)=火葬の動作を行う意味で、入滅(成仏)の証として行われます。

※回向文=功徳が故人のためだけでなく縁のある人たちに広く回向するために読誦します。天台宗の場合、「願以此功徳(がんにくどく) 普及於一切(ふぎゆうおいつさい) 我等与衆生(がとうよしゆじよう) 皆共成仏道(かいぐじょうぶつどう)」と唱えます。

※葬儀の式次第、作法は地域や寺院によっても異なります。詳しくは寺院、または葬儀社に確認しましょう。

天台宗の葬儀作法

天台宗の焼香

天台宗では、基本的な焼香の回数は3回です。

焼香では合唱礼拝し、右手の中指・人差し指・親指で香を取り、右手に左手を添えて額にいただき焼香します。この香を取る動作を3回繰り返したのち、再度、合唱礼拝を行います。ただし、天台宗では焼香の回数を明確にはしていないので、1回だけの場合もあります。

線香で焼香をする場合は、使用する線香の本数は1本もしくは3本です。葬儀の際に案内があった時は、その本数に従います。焼香の手順は、まず線香を左手に持ってろうそくで火を付けます。火は手で仰いで消しましょう。この際、左手に数珠を持っている方は、線香の煙を数珠にかけます。そして、線香が1本の場合は真ん中に立てます。一方、3本の場合は手前に1本、奥に2本を立てます。

天台宗の数珠

天台宗では、人の煩悩の数と同じ数である108つの楕円形の主玉に、4つの天玉と1つの親玉がくっついている数珠を使用します。この親玉からは紐が伸びており、その先には弟子玉と呼ばれる玉がついています。この数珠は人差し指と親指の間にひっかけ、紐の部分を下に垂らして持ちます。数珠の大きさには男性用と女性用があり、男性用は9寸、女性用は8寸のものを使用する方が多いようです。もっとも大きいものは大平天台と言います。

天台宗の葬儀の参列のマナー

葬儀に出席する際に用意する香典の表書きには、御霊前と記載をします。四十九日前はまだ現世に魂が存在していると考えられているためです。もし、四十九日を過ぎてから香典を渡す場合は、御仏前と記載します。四十九日の前か後か分からない時は、表書きに御香典と記載しましょう。目的を記載することはマナー違反にはなりません。

また、天台宗以外の宗派の方が参列する際は、自身の宗派の本式数珠を持っていくとよいでしょう。ご焼香の回数に関しては、司会者の方から案内されることが多いのでその案内に従って行います。案内がない場合は、自分の宗派に沿った焼香の仕方でも問題はありません。

まとめ

天台宗の葬儀では、散華という儀式や特殊な数珠の使用など、他の宗派と異なる点があります。これから天台宗の葬儀に参列する方は、初めて目にする儀式があるかもしれません。しかし、天台宗の葬儀では焼香などのマナーについては自身の宗派のしきたりに従えば失礼に当たらないので、心配は少ないでしょう。葬儀の見積もりが欲しい方や、葬儀について相談したいという方は、お気軽にご連絡ください。

葬儀・お葬式を地域から探す

最新情報